相談にのってて思うこと(1)
私の大学院の時の同級生K君は先週から毎日のように私にラインをしたり電話をしてきたりする。
その以前からK君とは研究の話や、厳しい博士就職の話などで話し込む仲だ。しかし、その頻度は月に何回、あるいは何カ月も連絡をとらないこともある。だから、この一週間の連日連絡はいまだかつてない高頻度で異常事態だ。
その話題は専らK君の結婚、妊娠、人生プランの悩みだ。
K君は一年前くらいから悩んでいた。プライベートでも研究に対する姿勢においても。プライベートでは1年前に離婚し、3歳の娘も一人いる。
K君の結婚生活は3年弱。
私もK君もそうだけど、研究者の結婚生活は短期でさくっと終わる場合も多々ある。きっと、研究における「Trial and error」がしっかり身についているからだと思う。
Tryはする。だけど、この方向は成功確率が低いerrorだと思った瞬間、さくっと頭を切り替えて、今の実験を切る。最初、どんなに期待して、準備に時間がかかった実験でも、「これは可能性が低い」と思った瞬間に切り捨てる。
そういった研究者の性質が結婚生活でも反映されているのかもしれない。
話をK君に戻そう。
K君は東大理2の出身で、そのまま東大の大学院に進んで、ずっと優秀だったから超有名研究室に希望通り配属された。
そのあと、論文もたくさん発表されたし、有名雑誌にも何度か掲載された。ドクター時代にはドイツにも2年研究留学していてドイツ語もぺらぺらだ。
しかし、あまり人望はない。彼は賢さゆえの毒舌と、わがままさがあった。だから周りからの評価は「傲慢で鼻につく奴」。私はK君の本質を知っているから、本当は傲慢じゃないことも知っている。彼は私よりずっと自信がない。昔から私は彼に
「なんでそんなに他人に嫌われるような言い方するの?あなたの無駄な攻撃性は自信の無さの表れ、もっと自信もちなよ。そして、その自信というのは他人を貶めることで得られるのもじゃないんだから他人をこき下ろしても見苦しいだけだよ」
と。何度言ったことか。
彼は自信がとにかくない。とても優秀で、研究や音楽の才能もある。彼はバイオリンを3歳から習っていて、いまだにオーケストラで弾いている。東大時代には、金町にある私の娘の中学に講師として招かれるほどバイオリンの腕もある。
なのに、私から見ると滑稽なほど自信がなく、まるで自分を守るように常に他者を攻撃する。彼にこき下ろされなかったのは大学院時代、学生、教授たちを含め、たぶん私一人だったと思う。彼は、私のことを、
「俺の話を真面目に聞こうとする人をはじめてみたよ。君みたいに賢い奴もいるんだね。俺様より賢いかもと思える人間に会えたのは3人目だと思う。君と出会えたことは俺様の宝だ!(彼は本当に自分のことを俺様と時々いう)」
と何度か言われた。彼には友達がいない。そんなことを言ったら私もほとんど友達なんていないけど。
彼の自信の無さの理由は、本人も自覚していたけど、
”人一倍、女の子が大好きなのに、全くモテなかったこと”
が大きな原因の一つだ。彼は中学、高校、大学、大学院、その後も全くモテなかったという。どんなに好きな女の子がいて、告白しても絶対にふられていたと。
その本当の辛さは私にはきっとわからないけど。彼は20年以上の長きにわたり深く自尊心を傷つけられてきたのだと思う。思春期になれば、異性に受け入れられたいと望むことはごく当たり前のことだ。
彼は決して恵まれたとは言えない外見に加えて持ち前の変人さによって全く女性に受け入れられてこなかった。
そして、彼はどんどん卑屈になっていた、その傷つけられた自尊心を隠すかのように他者に攻撃的になっていった。
彼の1回目の結婚は、彼には好意がないのに結婚した。相手の女性は同じオケの人で、男性と付き合ったこともなく、K君のバイオリンに一方的に惚れて告白し、二人はすぐに付き合った。
K君はひどい。付き合っているときから、その奥さんのことを、
「全然好みじゃないし、ブスだし、どこも好きじゃないけど、SEXさせてくれるんだ。でも、目を開けるとブスが目に入るから、目を閉じて綺麗な女性を想像してすればなんとかなる」
と。
それほど、彼は女性に受け入れられることに飢えていた。そんなSEXでも、やらせてもらえるということだけに喜びを感じて結婚した。
私は、そんな結婚続かないよと言ったのに。
案の定続かなかった。3年はよくもった方だと思う。
彼は奥様とのSEXにしか興味がなかった。しかも、奥さんそのものを好きなわけではない。いかに奥様が最初K君を好きだったとしても、そんな関係終わることは目に見えていた。
終わり方は劇的で、ある日突然K君の元に裁判所命令が届いた。
(つづく)。
RSウィルス劇症化のメカニズムについて。
今日はゼミだったので、ちょっとメモ。
Jozwik A et al., (2015) RSV-specific airway resident memory CD8+ T cells and differential disease severity after experimental human infection.Nature Communications 6:10224.
RSV(英: respiratory syncytial virus )感染は、5歳までに95%の人が感染する気道感染症。大人では、鼻水やのどの痛みなど軽い風邪で終わることがほとんどのウィルス。ただし乳幼児では劇症化し肺炎などの原因になることもある。そして、このウィルスには有効なワクチンはまだない。
私はウィルスワクチンの研究をしているけど、ウィルス感染と免疫機能の関係は複雑でまだまだ未知の部分が多すぎる。
今回の論文はこのRSウィルス感染が劇症化するメカニズムに迫った論文で、イギリスの有名雑誌Nature Communicationsに掲載されたものだ。
まず何と言ってもこの論文で一番すごいことは、感染実験なのに、人間を使っているというところ。日本では、感染実験ではサルを使うのが最上級であり、人を使うなんて許可が下りないし、絶対に無理な実験だ。しかも、成人49人も使っている。一体、どんな手を使って集めんだ。たぶん、高額な報酬だろうけど・・・。
とにかく、この49人にRSウィルスを感染させて、症状を観察し、血液とBAL(肺胞洗浄液:肺の中の液体)を採取し、それらのサンプルの中から免疫の動きと症状の重症度の相関を見ている。
実験データが膨大でよくぞここまでやったというボリュームの論文。さすがNature系。
これらの結果から言えることは、RSウィルス特異的なCD8 T-cellの誘導は血液中とBAL中のデータで全然違うこと。ウィルス感染実験では多くの場合血液データしか採取しない。肺の液体を採取するよりずっと簡便だからだ。
しかし、今回の研究では、全身性である血液中のCD8 T-cellはウィルス抑制にあまり関係なく、むしろ感染局所、つまりBAL中のCD8 T-cellが感染後の劇症化と関係があったということ。
この論文を読んで冷や汗をかいている研究チームもたくさんあると思う。ウィルスワクチンを研究していいて、「血液中のCD8 T-cellが増えている=ワクチン効果がありそう」とは言い切れなくなったからだ。
RSウィルスは今フェーズ1までいっているワクチンがある。特にそこの研究チームは真っ青なんだろうなぁ。でも、私は言いたい。人間からこんなにBAL採取するなんて日本じゃ絶対無理!!
最後の日のこと
彼とのことが少し落ち着いた気がするので書いておこうと思う。
その日は彼が転勤前に最後にあえる日だった。
片付けが終わって、一息ついた時、
彼は私の隣に座って、いつになく真面目に今まで聞いたことのない個人的な話を私にしてくれた。
過去に辛い結婚生活をしていたこと。
主婦だった奥様が家をゴミ屋敷にしていたこと、彼の給料を使い込み、借金を重ねていたこと、彼の部下との浮気…。それも何人も取っ替え引っ替え。
そのせいで、離婚後はずっと女性と付き合うことを避けていたこと。
彼は私の1つ下の方だけど離婚直後は奥さんのが借金を肩代わりし、やっと離婚後5年たって借金もなくなり、貯金もできていること。
そして、私の事を好きだってこと。
どうして、今言うの?なんで?
私の頭は混乱する。その時は、なんだか悔しくて悲しくて、彼に怒りさえ感じた。彼の気持ちのことなんて私には全然わからないと思った。
混乱する私を無視して、背の高い彼は、腰をかがめて私にすがりつくようにして言った。
本当は、このまま君を一緒に連れていきたい・・・
僕が本気でそう懇願したら君は来てくれるの・・・・?
彼は私にすがりついているから、私から彼の表情は見えない。
泣いていたのか、声が小さすぎるからか、彼の声はかすれていた。
一瞬、ひるんだけれども、この状況で、じゃあ一緒に行くわと言えるほど私は純粋でもなく若くもない。
見送るときに、私は寂しくて泣くかと思っていたけど、涙なんて出なかった。
私の心は寂しさや悲しみよりも混乱に支配されていた。
彼の行動や発言が私にはわからなくてとても混乱していた。
だけど、少し時間が経つとなんとなく彼の気持ちが分かった気がした。
たぶん彼は怖かったのだ。
彼は私が好きだと言ったけど、そばに私がいて、いつでも付き合えるという状況ではきっと言えなかったのだと思う。
彼はまだ女性と付き合うのを怖がっている。
それは、私に対しても例外ではないのかもしれない。
私は彼のパートナーにはなれない。だけど、友人としてなら支えてあげらえるかもしれない。
彼の傷ついた心を少しだけ癒してあげることができるかもしれない。
遠くにいってしまった、あなた。もう、ほとんど会えなくなると思うけど、これからもずっと私は友達でいれると思うよ。
私に恋する気持ち
昨日、私が他の人に恋心を抱いているという記事を読んでくれた人に、突然、「僕と結婚してくれませんか?」と言われた。
まさに豆鉄砲を食らったハトのごとく私はポカーンとしてしまった。
理由を尋ねると、彼は丁寧に文章で説明してくれた。
それはとても誠実な彼の気持ちで、読んでいるだけで顔がほころんでしまうようなラブレターだった。こんな素敵なラブレターをもらったことは37年間の人生で一度もない。はっきりとそう言える。
彼は、なんて、優しくて、紳士で、思慮深く、私の深淵を見てくれようとしているのか。そのうえ、私の外見さえ気に入ってくれている。
そんな風に思ってくれていたなんて本当に嬉しくてたまらない。
だけど恋する気持ちは不思議だ。本当に。
いつ、どこで、何を見て、何を感じて恋するかはまるで不慮の事故のようなものだ。
私は同時に何人にも恋することはできない。一回につき一人だけ。
そんな実らない恋心を抱く私に恋するのは、素晴らしい人だ。
私に恋をしてる、思慮深く優しい、その人を私はとても好きだ。
彼と日常を共有し、もっと彼のことを知りたいと思っているし、彼にも私のことをもっと知ってほしいと思っている。そしてそれがこの先、どんな形でも良いから一生続いてほしいと思っている。
私が恋する相手はいつも少し違っている。私は、精神面で合わない人ばかりに恋をする。
結婚するなら思慮深く、穏やかで、言葉一つで私を幸せにできるような彼のような人がいいに決まっている。話しているだけで毎日がきっと楽しいし、彼と一緒なら私の世界はもっと広がる気がする。
ただ、今はもう少しだけ、私から離れていく友達の彼を想わせてください。
喉が痛くて
恋する気持ちの不思議
私はたぶん、彼に恋心を抱いている。
だって、彼を見ると胸がどきどきするから。
話しかけられると声が上ずってしまうから。
彼が私のそばにくると緊張して手が冷たくなってしまうから。
彼のこと、ほとんど何も知らないくせに彼のことが好きだと思う気持ちって不思議だ。
どこが好きかって、
笑った時に福の神みたいな彼の顔が好き、わたしのことを呼ぶ彼の声が好き、くまさんみたいな背中が好き、ただそれだけ。
彼と私の人生は交わらない。
彼はずるい奴だ。モテる男の典型。私の気持ちを知ってか知らずか、時々私のことを好きなそぶりを見せる。だけど、それが愛じゃないのは私にもわかる。
私に対する征服欲や性欲の類の感情だと思う。
そんなことを言ったら私だって彼にひどい。
彼に惹かれているところといったら、彼の身体的特徴ばかりじゃないか。
彼の精神や考えや感情に興味があるのかしら。
魂が呼応する相手を探しているのに、私の生殖細胞が時々邪魔をする。
男は「時と場合によって下半身で考えるときと脳で考えるときがある」っていうけど、女だって同じだと思う。
早く仙人になって性的な煩悩から解き放たれたい。
彼とは友達。それ以上はない。今までもこれからも。
彼は今週いっぱいで私から遠く離れたところに転勤する。
彼の声を頻繁に耳にすることもなくなる。
笑った顔を見なくて済む。
ほっとしてるけど、すでに寂しくて泣きそうだ!
これでいい。
泣きたいだけ泣いてすっきりしたらきっと春が来る。
冬が終わって、桜が咲いて、汗ばむ季節になる頃には私は彼のことを何の痛みもなしに思い出すことができると思う。彼と笑って話もできるだろう。
胸が痛いのはほんの一瞬のことだ。
今日からブログ
毎日思ったことを少しずつ書いていけたらいいな。