最後の日のこと

彼とのことが少し落ち着いた気がするので書いておこうと思う。

その日は彼が転勤前に最後にあえる日だった。

片付けが終わって、一息ついた時、
彼は私の隣に座って、いつになく真面目に今まで聞いたことのない個人的な話を私にしてくれた。

過去に辛い結婚生活をしていたこと。

主婦だった奥様が家をゴミ屋敷にしていたこと、彼の給料を使い込み、借金を重ねていたこと、彼の部下との浮気…。それも何人も取っ替え引っ替え。

そのせいで、離婚後はずっと女性と付き合うことを避けていたこと。


彼は私の1つ下の方だけど離婚直後は奥さんのが借金を肩代わりし、やっと離婚後5年たって借金もなくなり、貯金もできていること。






そして、私の事を好きだってこと。





どうして、今言うの?なんで?





私の頭は混乱する。その時は、なんだか悔しくて悲しくて、彼に怒りさえ感じた。彼の気持ちのことなんて私には全然わからないと思った。

混乱する私を無視して、背の高い彼は、腰をかがめて私にすがりつくようにして言った。



本当は、このまま君を一緒に連れていきたい・・・
僕が本気でそう懇願したら君は来てくれるの・・・・?



彼は私にすがりついているから、私から彼の表情は見えない。
泣いていたのか、声が小さすぎるからか、彼の声はかすれていた。


一瞬、ひるんだけれども、この状況で、じゃあ一緒に行くわと言えるほど私は純粋でもなく若くもない。


見送るときに、私は寂しくて泣くかと思っていたけど、涙なんて出なかった。
私の心は寂しさや悲しみよりも混乱に支配されていた。


彼の行動や発言が私にはわからなくてとても混乱していた。

だけど、少し時間が経つとなんとなく彼の気持ちが分かった気がした。

たぶん彼は怖かったのだ。

彼は私が好きだと言ったけど、そばに私がいて、いつでも付き合えるという状況ではきっと言えなかったのだと思う。

彼はまだ女性と付き合うのを怖がっている。
それは、私に対しても例外ではないのかもしれない。

私は彼のパートナーにはなれない。だけど、友人としてなら支えてあげらえるかもしれない。
彼の傷ついた心を少しだけ癒してあげることができるかもしれない。

遠くにいってしまった、あなた。もう、ほとんど会えなくなると思うけど、これからもずっと私は友達でいれると思うよ。