正室をもつあなた
彼は、最近、よく私にこう言う。
「ねぇ、好きだよ」
私は、
「そう、ありがとう」
と言う。彼は、
「そんだけ!?」
っていうけど、そんだけだよ。
あなたは甘えん坊な暴君ね。
自分でも自覚してるじゃない。私に対して我儘にならないように私のことを下の名前で呼ばないって言ってたものね。でもね、私から言わせてもらえば、今だって十分すぎるほどあなたは我儘よ。
私があなたのことを好きそうなことを感じて、急に惜しくなったんでしょう。手に入れたくなったのよね。その屈強な体に似つかわしくない幼い男の子のような顔をしたあなたは、胸に秘めたその強い独占欲と征服欲を隠しきれていない。
そういう征服欲を私に見せた瞬間、すべてが壊れてしまうことをあなたは知ってる。だから我慢してるのよね。
正直、そんなあなたも愛しく感じるときがある。
「僕が君を守るよ」
あなたは嘘偽りのない瞳で私の目をまっすぐ捉えて言った時、とても嬉しくて胸が苦しかった。
だけど、私はわざとおどけて、
「あなたじゃ、ムリムリ」
って言ったよね。
だけど、本当に嬉しかったんだ。あの時、あなたに守ってほしいと思ったんだよ。だけど、あなたが守るのは私じゃない。私は絶対に二の次になるのを知ってる。
あなたといる限り、私はいつも浮気相手、よくても第2夫人。あなたには束縛が強いとっても怖い正室がいるものね。
あなたの正室はあなたの心も体も絶対に自由にはさせてくれない。
どんなときだって、あなたは自由に動くことさえできないまるで囚われの身。
あなたの囚われの範囲内は、半径15km圏内ってとこよね。あなたの正室は夜中だろうと休日だろうとあなたを呼び出すこともある。
一時間以内にもし正室の元に戻れなかったら、あなたは正室に愛想をつかされて一方的に離婚させられる。一発アウトってとても怖い正室よね。
でも、あなたは15歳の時に正妻にあなたの生涯を捧げることを誓ったでしょう。
どんなときも、正室の囚われの身でいることを誓った。
私はやっぱり正室になりたい。わたしを一番に考えて、私がピンチのときはいつだって駆けつけてくれる人のそばにいて、ずっと愛したいんだ。
だから、今は無理。わたしたちは友達のままが一番いいんだよ。